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2011年度
2011年の総括・・・@
2011年度の方針は、尾形を基本とした中で最大限に「カシラ」と「尾筒」に拘るものでした。
数系統の種魚の中から6系統を選び、新規導入の1系統を合わせた計7系統を中心に交配させました。
3月下旬をピークに約15腹を確保しましたが、実際の育成に至ったのは11系統となりました。
それら系統の特徴を最大限に発揮させる飼育法を熟慮し、例年よりも促進的育成を選択しました。
具体的には、シーズン開始からの餌やりの強化・2日に1度の水換え・青苔の排除・低密度の方針で、
途中休む事なく8月までの5ヶ月間は促進的育成をひたすら続けてみました。
2011年の総括・・・A
促進的育成を行った結果、孵化後2ヶ月で6cmのサイズとなり、青仔から黒仔になる頃の姿に至っては、
例年とは明らかに異なる姿が大半であった事に気付かれた方も多いと思います。
「カシラと尾筒は系統」の言葉の如く、種魚選択に促進的育成が合わさった事で、
多くの系統で非常に発達したフンタンと極めて太い尾筒がはっきりと確認できる状態となっていました。
一方、カシラの出る系統であるにも関わらず、黒仔の段階でフンタンが殆ど発達しない系統もありましたが、
秋頃になって急激にフンタンが発達する系統を経験しており、系統を信じて育成を続けました。
2011年の総括・・・B
極端な促進的育成を続けた結果、8月の終わりまでに全長13cmを超える当歳魚が続出し、
成長を抑える方法を考慮しなければならない状態となりました。
同時に、魚の成長を促進するには今回の様な育成を行えば良い事を改めて確認する結果となりましたが、
2005年頃よりも魚は非常に成長し易くなった印象を強く持ちました。
ランチュウの世界では、品評会入賞魚の兄弟を導入しながら、新しい世代を誕生させる場合が多く、
今の時代に即した系統が好まれた事で、人気のなくなった系統の淘汰が行われいる可能性があります。
この場合、魚は一定の系統を失いつつあると言えるかもしれませんが、ランチュウには終着点がなく、
時代と共に移り変わる姿は新しい系統の誕生を意味している現状もあります。
今後、ランチュウの姿がどの様な方向に向かうのか、私が目指す理想像を再び考える結果にもなりました。
2011年の総括・・・C
2011年夏に自宅の改修が決定し、9月からの工事開始の為に結果的に抑制的な育成への
切り替えが強いられる事となりましたが、11月に16cmまで成長した当歳魚がいました。
しかし、その姿は豪快である一方で繊細さが少なくなった印象でした。
黒仔の段階でフンタンに乏しかった系統は、10月には系統通りの立派なカシラに仕上がり、
改めて系統の威力を確認出来たのも2011年の経験の1つでした。
そんな中で、成長力のある系統であれば、もっと「ゆったりとした育成」でも仕上げる事が出来ると感じ、
2人目の孫誕生と自宅の改修が丁度良い機会となった事で、2012年度の方針が必然的に決まりました。
一般に、ランチュウは飼育に手間や経費があまりに膨大に掛かると言われますが、
魚は飼育に対する許容を持っており、仕上げる事の出来る最低限についての追求を行う方針としました。
2012年の方針・・・@
2012年度は2011年度とは正反対の「ゆったりとした飼育」を行う方向に大きく舵を切り、
餌やりの回数抑制・水換えの回数抑制・これらを可能にする密度を主に模索する事にしています。
しかし、最初から最大限の抑制を意識して育成を行う方法は、私にとって全く新しい挑戦であり、
魚の体調や成長度合いなどを管理する事に関しては、例年以上に細かなデータ収集を行う予定です。
限られた時間で最大限の効果を得る為の基準が出来れば、私自身の飼育に新しい幅が出来ますし、
ランチュウ愛好家の裾野を少しでも増やす事に役立つのではとの夢も密かに抱いております。
2012年の方針・・・A
交配に関しては、これまでの数系統に加え新たに1系統を導入し、例年通り尾形に拘る事を優先させます。
その中で、再び「カシラ」と「尾筒」もしっかりと意識した掛け合わせを行います。
今年の「ゆったりと飼育」は、2010年の「シンプルな飼育」とはかけ離れた飼育ですので、
系統は大きく変化しないものの、秋の段階で今までとは異なる魚の印象に仕上がる可能性もあります。
しかし毎年の事ですが、実際にやってみないと分からないのもランチュウの世界ですので、
四季と共に孫の成長を楽しみ、綺麗な魚が出れば晴れ舞台に出してあげようと考えております。
2012年度も、よろしくお願い申し上げます。
伊東養魚場 伊東敬光
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