11月の飼育

来シーズンに向けて池の整理、そして冬眠の準備を行う時期。


11月上旬の飼育

1, 品評会までに

9月以降、水温の低下と日照時間の減少の為に魚の成長は明らかに悪くなってしまいます。

当歳魚の場合、11月の段階で12cmまでは比較的簡単に出来るのですが、
13cm以上にするにはなかなか難しいものです。
9月上旬の段階で10cmを超えていないと達成はほぼ不可能と言う事も出来ます。

毎年、シーズンオフに1年間を振り返る事でその年の反省点を探し出し、
飼育環境や飼育技術を向上させる事で来年につなげる事が大切です。
そして、良い姿を維持させながら魚を大きくする自分なりの方法を見つけ出す必要があります。


2, 餌

この時期ともなると、水温の低下から魚は殆ど成長しなくなっています。
したがって、この時期の餌やりの基本は、痩せない程度の餌を与える事とします。
また、日照時間の減少の為、最終の餌の時間帯にも十分に注意する必要があるでしょう。

餌の与え方は、低蛋白ペレットを10匹あたりティースプーン1〜1.5杯の分量で、
朝8時から夕方3時半頃までに計3回程度与える事を基本とします。

天気が悪くて水温が上昇していない様であれば餌を与えない方が無難と言えます。
変わりに青水中のプランクトンや青苔を多く食べさせば良いのです。


3, 水かえ

この時期の水かえは、冬眠期を見据えて良質な青水を確保する為にも、
古水が1・新水が1の割合で7〜10日に1度のペースで行う事を基本とします。

青水が出来ていない場合は、割水の程度を上げたり飼育密度を上げる等の対処が必要ですが、
水換えの時期を遅らせる方法を止めた方が良いでしょう。
池底に沈殿した老廃物や泥によって、体調を落とす魚が出てくる為です。


4, 保温覆い

夜間の水温の低下を抑える為に、夕方から翌朝まで保温覆いを使用が基本です。

水温が低下する時期、飼育池の青水が徐々に薄くなってしまう場合があります。
この原因は、日照不足・低密度での飼育・水質の悪化などです。

そして、青水は水温の保持などで冬期にはかなり役立つので、
青水が薄くなってきた場合は、その原因を考えて対応した方が良いでしょう。
特に、水質の悪化が原因である場合は水換えをし、別の池から割水をする必要があります。

なお、青水維持や青水を作る目的の為だけでヒーターを使用するのは良くありません。
全く青水でない場合でも、魚は冬眠中に死んでしまう様な事はありません。


5, 冬眠に向けて

大切な事は過保護な飼育をしないという事です。
長い冬眠を迎えるに当たって、寒さに対する十分な抵抗力を付けさせる為です。

豪雪地帯で無いにも関わらず、水温の低下を気にして池全体をビニールハウスで覆ったり、
ヒーターを使用する飼育をしてしまうと、当歳魚は季節感を失い産卵しなくなります。

また、自然に順応する能力の低下から体質が弱くなり、
早い時期に錆が出てきたり、寿命が短くなったりもします。

豪雪地帯は除き、冬眠に向けては保温覆いの使用に留めるべきではないでしょうか。


6, 池の整理

冬眠前に来年度に向けた池の整理を行うブリーダーは多くいます。
目的は、交配の為のスペースの確保、種魚候補の確認、飼育密度の調節等です。

この時期に種魚の写真撮影を行う事も比較的大切となります。
シーズンオフ中に掛け合わせを検討する為です。

なお、もし種魚にも良い姿を求めるのであれば、この時期に購入するのも1つの方法です。


11月下旬の飼育

1, 餌

11月下旬ともなると水温が10℃を下回る日が多くなり、
ランチュウの活動もかなり鈍くなってきます。
当然、消化機能も非常に抑制されている為、間違った餌やりは消化不良を引き起こします。

したがって、餌の与え方は、低蛋白ペレットを10匹あたりティースプーン1杯の分量で、
朝8時半から昼3時頃までに計1〜2回程度与える事を基本とします。
青水での飼育を始めている事から、青水中のプランクトンや青苔を多く食べさせる事も大切です。

天気が悪くて水温が上昇していない様であれば餌を与えてはいけません。
水かえをした日の餌やりもしない方が良いでしょう。
この時期ともなると、午前中の餌でも十分に脂肪がついて来ます。


2, 水かえ

水温の保持と冬眠中の体調維持の目的で、今までよりも濃い青水で飼育を開始します。
古水が1・新水が1の割合で、1〜2週間に1度のペースで行う事を基本とします。

なお、大会後の魚の水換えは、その日の最後に行う事が大切です。伝染予防の為です。
当然、掃除道具も使い分けが必要ですし、イソジンを使ったこまめな手洗いも有効です。
特に種魚は何としても伝染から守る必要があると言えるでしょう。


3, 保温覆い

夜間の水温の低下も大きくなる為に、夜間の保温覆いが欠かせなくなります。

覆いの使い方は人それどれであり、池の全てを覆ってしまう愛好家もいますし、
発泡体を池に浮かべるだけの愛好家もいます。

私の場合、発泡体は劣化して使い難くなる事から使用はしません。
透光性のある波板で池の半分〜3分の2を多い、10度程度の傾斜をつける様にしています。

※豪雪地帯ではハウスを使用。冷え込みの厳しい地域では池全体を覆う傾向にあります。


4, 冬場の飼い込み

5月下旬〜6月交配の場合、どれだけ上手に飼い込み続けたとしても、
魚の大きさは11〜12cm止まりとなります。

もしこの魚を二歳で会魚とする場合、冬場でもヒーターを使用して、
飼い込みを行った方が良いでしょう。成長の遅れを取り戻す事が目的です。

しかし、水温を上げたとしても日照時間の問題や朝昼の大きな温度差の為、
なかなか太身が付き難いという現実もあります。

この問題を少しでも改善する方法として、室内での水槽飼育を行う方法があります。
タタキ池やプラ舟にヒーターを入れて屋外で飼い込むよりも魚は成長してくれます。

飼い込む期間は、魚の使用目的に応じれば良いでしょう。
会魚であれば春まで飼い込む場合もありますし、
種魚であれば12月までとして2ヶ月間の冬眠をさせる必要があります。


5, 温室の怖さ

冬場に魚の飼い込みを行う場合、温室が理想的であると考えてしまいがちですが、
実際は必ずしも正解であるとは言えません。

温室に移して1〜2週間は日中の暖かい環境の為に魚は盛んに餌を求めますが、
やがて日中でも水面でぼんやりとしたり、池の隅でほとんど泳がなくなる魚が続出して来ます。

これは、日中は暖かい環境となったものの、夜間の冷え込みは防ぐ事が出来無い為に、
1日の温度差が大きくなってしまい魚が順応出来なかった事が考えられますが、
他にも、夜間の冷え込みで消化不良を引き起こした事、結露と蒸れが害を与えた事も考えられます。

さらに悪い事に、温室の環境は病原菌が繁殖しやすい水温である上、
一度病気が発生してしまうと温室中に病原菌が広がり、全ての魚を落とす可能性があります。

温室は上手に使用すると非常に良い飼育施設となりますが、
魚にとって過酷な環境となる面もある事を忘れてはいけません。

※私の経験上、温室よりも室内でヒーターを使用した観賞用水槽で飼い込みを行った方が無難である。




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