魚をすくう際の注意


1, 魚を網で手元に寄せる場合

「静かに確実に丁寧に。」が基本。

魚を網で手元に寄せる場合、静かに網を水中に入れて、確実に捕らえた後、
水面に上げる事なく丁寧に手元に寄せる事が基本となります。

この場合、魚の動きを予想して網を進める事が重要です。網を急いで
水中にいれると、魚を驚かせる事になりますし、勢い良く追い回すと、
鱗が取れてしまう事や尾張りに悪影響をもたらす事になります。

魚を水面に上げると網の中で魚が跳ねる為に、魚体から出血する事や
尾先が傷つく事になりますし、乱暴に手元に寄せると鱗が取れる事や尾先を
痛める事になります。

会魚の場合、尾形や尾捌きが非常に重要である為に、扱い方に注意したいものです。

魚を手元に寄せた後は、水中にいる魚を素手でつかんで洗面器に入れるか、
洗面器を使用して周りの水ごと魚をすくいあげる事が基本となりますが、
魚を素手でつかむ場合は体温差に注意が必要です。
あらかじめ手を水につける事で冷やしておく事が大切です。



2.魚を直接素手で触る場合・・・@

人の体温と魚の体温には差がある。

魚を直接素手で触る場合、手の温度を水温に近い温度にしてから触る必要があります。

人は体温が一定に保たれる恒温動物、魚は水温の変化に伴って
体温が変化する変温動物です。

この為に生じる体温差は、冬場で何十℃・夏場でも数℃以上になるものです。
さらに、この体温差を感じるのは人であれば手先のみですが、
魚は体全体で、この温度の違いを受け止める事になる訳です。

一般に、2〜3℃の急激な温度変化で魚は体調を落としますので、例え短時間であっても、
人と魚の体温差がもたらす悪影響は非常に大きなものと言えるでしょう。



●魚を直接素手で触る場合

@手の温度を水温に近い温度にしてから触る。
A体温を落とす為の洗面器を別に用意する。
B池に直接手をつけるのは自分の池だけとする。

※魚の体温は水温よりも0.5℃程度高い。
※爪を切っておく事も重要。(外傷の予防。)






3.魚を直接素手で触る場合・・・A

野球のフォークボールの様な握り方でつかむ。

魚をつかむ場合、人差し指と中指で尾筒を上から挟む様に持ちに行きます。
この場合、尾先には触れない様にする事が重要です。傷つけない様にする為です。

尾筒を上から挟んだ後、親指と薬指と小指で魚の胴と首を軽く握り、
手のひらで魚の眼を上から覆い隠す様にしてつかむのが良いでしょう。

この方法は品評会で魚係りの人が実際に行っているものであり、
魚を傷める可能性が少なく、しっかりと持てる方法だと言う事が出来ます。






4.魚を直接素手で触る場合・・・B

両手を使って頭から胴を包み込む。

野球のフォークボールの様な握り方は慣れが必要である上、
親魚や弐歳魚に対しては、その魚体の大きさから不向きであると言えます。

この場合、両手を使って頭から胴を包み込む様な持ち方をすると良いでしょう。
当然、尾には触れない様に注意する必要があります。

この方法も品評会で魚係りの人が実際に行っているものです。






5, 産卵前の親魚について・・@

産卵前の親魚は手網みですくい上げない。

産卵前の親魚を手網みですくうと、跳ねた際に網の中で産卵してしまう事がありますし、
手でつかんだ場合も、腹部の圧迫の為に産卵してしまう事があります。

したがって、産卵前の親魚を洗面器に取り上げて別の池に移動させる場合、
大型の洗面器を使って周りの水ごと静かに魚をすくい、跳ねない様にする必要があります。

一見、腹の出来ていないメス魚でも、交配シーズンである限りは産卵をしてしまう
可能性があります。したがって、洗面器を使って移動させた方が良いでしょう。



6, 産卵前の親魚について・・A

産卵前の親魚は洗面器に長時間入れない。

産卵前の親魚を洗面器に長時間入れておくと、洗面器の中で産卵してしまう事があります。
狭い容器に閉じ込められる事で生じるストレスが産卵刺激となる為です。

魚がストレスを感じて洗面器の中で産卵するまでの時間は、魚によって異なりますが、
長くとも3分までにした方が良いでしょう。

しかし、中には3分も経っていない場合でも産卵してしまう魚が居るのも確かです。
産卵前の親魚を洗面器に入れる場合は可能な限り短時間とする事が重要です。



7, 稚魚について

水換えのペースを早める事で負担が軽減する。

水換えや選別では、稚魚を洗面器で周りの水ごとすくい取りますが、
洗面器の下敷きにしないと言う心構えが大切です。

稚魚を粗末に扱うと、魚体への傷の為に鑑賞価値を落としてしまうだけでなく、
多くの稚魚がその犠牲となってしまいます。

さらに、稚魚を網で乱暴にすくい上げると、尾先のみならず尾肩も傷つき、
尾まくれやビリなどの原因になる場合があります。

水換えが遅れると沈殿物やアオミドロが増えてしまい、
逆に稚魚をすくい取る作業が大変になります。

稚魚をすくう際の負担を軽減させる為には、水換えのペースを早める事で、
水質の悪化を抑えながら成長促進に徹する事が大切となります。



●ビリやマクレの原因

@ビリ系統である事が最大の原因。
A尾肩についた傷が影響する場合がある。
B泳ぐ際の水流が影響する場合がある。






8, 冬季について

冬季は魚を外気と接触させない。

基本的に冬季は冬眠中である為に、魚をすくい上げる事はありません。

しかし、水質の悪化の為に水換えがどうしても必要だと判断した場合は、
魚をすくい上げて他の池に移動させる必要が生じます。

しかし、この場合、魚を冷たい外気に接触させる事は絶対にしてはいけません。

冷たい外気に接触させると、体表面の粘液量が増加して体調を落とす原因になり、
最悪の場合、死んでしまう事も十分に考えられます。
この時期の水換え自体が魚にとって好ましくない為に、十分に注意したいものです。

冬季にどうしても魚をすくい上げる必要がある場合は、
大型の洗面器を使って周りの水ごと静かにすくう必要があります。

そして、放流させる際は洗面器を池に沈めて、魚が洗面器から泳ぎ出させる様に
静かに行うと良いでしょう。






9.会魚について

1年を通して手網ですくい取る事はしない。

会魚の場合、体表面や尾に傷がついてしまう事は致命的と言っても過言ではありません。
特に、尾先に傷や充血がある場合は、審査される事なく終わってしまう場合があります。

したがって、会魚を手網ですくい取る事は絶対に避けるべき事だと言えるでしょう。

手網を使うのは魚を手元に導く場合に留め、すくい取る際は、
洗面器や素手で行う方法に徹する事が大切です。



●会魚をすくい取る場合

@手網は魚を手元に導く場合に限り使用する。
Aすくい取るのは洗面器か素手で行う。

※手網ですくい取ると充血や外傷を来たす。
※素手で行う場合は体温差に注意が必要。










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