飼育水の水質


1.水道水の使用・・・@

水道水を使う場合は塩素に注意。

水道水には酸素が含まれており、水質は1年を通して比較的安定していると言えます。
したがって、水道水はランチュウを飼育する水として申し分無いと言えるでしょう。

ただ、使用に当たっては、塩素(カルキ)の除去が必要となります。
ランチュウにとって塩素は有害であり、除去しないと死なせてしまう結果となります。






2.水道水の使用・・・A

塩素の除去方法として汲み置きがある。

昔から行われている塩素の除去方法として、汲み置きがあります。

従来の基本では、2〜3日前からの汲み置きが必要であると言われていましたが、
実際の所、夏場なら半日〜1日、冬場なら1〜7日間とする場合が多いと言えるでしょう。

直ぐに塩素を除去したい場合は、ハイポを加えますが、
入れ過ぎでは逆に害を与える危険性がありますので注意が必要です。



●塩素の取り除き方・・・実際

・夏場は半日〜1日の汲み置きをする。
・冬場は1〜7日間の汲み置きをする。
・急ぐ場合はハイポやカルキ抜き剤を使用する。






3.ハイポを入れ過ぎた時の害

硫黄が遊離して魚に害を与える。

説明書記載の50倍以上のハイポを散布した場合、時間の経過と共に特有の臭いを放ち始め、
やがて水が白濁してしまう場合があります。

この現象は、ハイポに含まれている硫黄(S)が遊離した為に「硫黄臭」を発生させ、
遊離した硫黄が水中のミネラルと反応した為に「白い濁り」が生じたと言う事が判明しています。

この様な環境下で飼育を続けた場合、魚が全滅してしまう可能性がありますので、
ハイポの入れ過ぎには十分な注意が必要です。



4.ハイポの投与量に対する私の考え

水100Lに対してハイポ5粒を散布。

ハイポ1粒(0.2g)は計算上、30Lを超える水道水の残留塩素を取り除く事が出来ると予想されます。
一方、説明書にはハイポ1g(3〜5粒)を水道水40Lに散布するとの記載があります。

また、ハイポの入れすぎは上記で示した様な状況を招く危険があります。

したがって、私の場合、ハイポの粒の大きさの違いや遊離残留塩素濃度の変化を考えて、
水道水100Lに対してハイポ5粒を散布する様にしています。



●ハイポの散布量のまとめ

説明書き
→ハイポ1粒を水道水10Lに散布。
私の場合
→水道水100Lに対してハイポ5粒を散布。



5.イソジンとハイポ

ヨウ素(イソジン)も中和させる。

ヨウ素は塩素と同じハロゲン元素である為に、ハイポによって脱色する事が出来ます。
つまり、褐色のヨウ素が中和される事によって透明となる訳です。

例えば、イソジンで消毒した事で池が褐色に染まった場合、
ハイポを加えた水溶液で洗浄すると早急な脱色が可能となります。

ただ、イソジンの色は自然に薄らぎますので、急いで脱色を行う必要性は少ないと言えるでしょう。






6.井戸水の使用・・・@

井戸水は硬水で水質は不安定。

一般的に、井戸水は魚の飼育には向いていないと言われています。
硬水である事、1年を通して水質が安定しない事が理由です。

しかし、硬水にはカルシウムを始めとする多くのミネラルが含まれている為に、
魚の骨格形成には硬水の方が良いと私は考えています。

特に尾張りに注目すると、硬水で飼育した方が良い成績になると言う印象があります。

ただ、成長の速度に関しては、硬水よりも軟水の方が僅かながらに良い印象がある為に、
成長を加速させたい場合は軟水を使用する方針とします。

なお、汲み立ての井戸水には酸素が全く含まれていない為、
そのまま使用すると酸欠を引き起こす結果となります。

井戸水を使用する前は、少なくとも半日は十分なエアレーションを
行う必要があると言えるでしょう。






7.井戸水の使用・・・A

使用の際は水質検査してもらう必要がある。

一昔前までは、雨水や池沼水などが飼育用水として使用出来ましたが、
最近は汚染の為に殆どが使用出来なくなっています。

当然、井戸水の汚染についても例外ではなく、使用するに当たっては、
予め保健所で水質検査してもらう必要があるでしょう。

なお、水質検査の項目には、菌類、臭い、泡、基礎的性状、一般性状、無機物質重金属、
一般有機化学物質、農薬、消毒副生成物がありますが、
魚の飼育を行う上では、少なくとも以下の項目を満たす必要があります。



●水質の検査項目

臭  気    : 異常でない事。
色  度    : 5度以下。
   白濁した水: 亜鉛の混入。
   赤い水  : 鉄サビの混入。
   青い水  : 銅の混入。
   黒い水  : マンガンの混入。
濁  度    : 2度以下。
   農薬や石油や生活廃水の混入に注意。
pH 値    : 5.8〜8.6。
硝酸性窒素及び
亜硝酸性窒素:  10mg/L以下。
塩素イオン   : 200mg/L以下。
有機物等    :  10mg/L以下。
鉄       :  0.3mg/L以下。
硬度      : 300mg/L以下。
蒸発残留物   : 500mg/L以下。



8.飼育水のpH・・・@

魚に影響を与えないpHは5.8〜8.6。

基本的にpHは0〜14までの範囲にあり、7が中性となっています。

7より小さい場合は酸であり、数字が「1」小さくなると酸の度合いは10倍強くなります。
逆に7より大きい場合はアルカリであり、
数字が「1」大きくなるとアルカリの度合いは10倍強くなります。

なお、魚に影響を与えないpHは5.8〜8.6と環境庁が発表しています。






9.飼育水のpH・・・A

硝酸の蓄積で飼育水のpHは徐々に下がる。

水換えを長期間行わないと飼育水のpHは徐々に下がります。

魚の排泄物から生じるアンモニア(有害)は、ニトロモナス属のバクテリアによって
亜硝酸塩(有害)に硝化され、さらに、ニトロバクター属のバクテリアによって
硝酸塩(比較的無害)にまで硝化されます。

この硝酸塩が蓄積する事で、飼育水のpHが徐々に下がる結果を引き起こす訳です。



●アンモニアの硝化過程。

アンモニア⇒ニトロソモナスが亜硝酸塩に硝化。
亜硝酸塩 ⇒ニトロバクターが硝酸塩に硝化。






10.飼育水のpH・・・B

pHの低下を防ぐには水換えが最も有効。

長期間に渡って水換えを行わなかった場合、硝酸の蓄積によってpHは
低下しますので、これを防ぐ為には硝酸やその原因物を除去する事が求められます。

これを根本から解決させる方法は水換えだと言えるでしょう。

しかし、なかなか水換えが出来る環境に無い場合、硝化還元菌や薬剤等を
用いる事を考慮する必要があります。

具体的には、青水や青苔や水草の使用、エアレーションの増加や汚れの掃除、
様々な水質調整剤や貝殻やサンゴの使用を考慮する必要があると言う事です。






11.飼育水のpH・・・C

pHの低下を防ぐ各種方法のメカニズム。

青水や青苔や水草は植物である為に、硝酸塩を養分として吸収する事が期待出来ます。

しかし実際の所、大半の硝酸塩は吸収されずに残ってしまうので、
植物だけでpHの低下を防ぐ事は難しいと言えるでしょう。

エアレーションに関しては、水中の過剰な二酸化炭素を追い出す結果、
酸性に傾いていたpHは改善しますが、溶存酸素量の増加の為に硝化還元菌の1つである
嫌気性バクテリアの効果は一切期待出来なくなる現実もあります。

汚れの掃除に関しては、排泄物をこまめに除去する事で硝酸塩の原因を減らす事が出来ます。
この場合、糞や残餌を手網ですくい取る方法や濾過装置を使う方法が一般的です。

水質調整剤には、硝酸塩を減少させる薬剤やバクテリアを含む薬剤など色んな種類があります。
ただ、薬価が高い為に大容器での使用には適さないと私は考えます。

貝殻やサンゴの主成分は炭酸カルシウムであり、酸が存在する場合に反応が生じ、
酸を中和させる事が出来ます。
この方法は大容器でも簡単に行う事が出来ますが、水の硬度が増加する結果となります。



12.飼育水のpH・・・D

光合成によって1日のpHは変動する。

1日のpHの変動に大きく関わるのが水に溶けた二酸化炭素の量であり、
その量を決定する要素として、魚の呼吸・植物の光合成と呼吸・エアレーションなどがあります。
中でも植物の光合成の影響は大きいと言えるでしょう。

つまり、日中は盛んに行われる光合成の為に、水中の二酸化炭素が急速に消費されて
アルカリに向かいますが、夜間は二酸化炭素が蓄積する為に、酸に傾く事となります。






13.飼育水のpH・・・E

pHの異常で様々な問題が生じる。

pHが不適当である場合、魚の外見や生理機能に様々な問題が生じます。

中でも食欲低下や粘液分泌過多の頻度は高く、この様な症状を来たしている場合は
飼育水のpHを確かめる必要があります。

その際、pHに関係するアンモニアや亜硝酸や硝酸の濃度を確かめる事も
大切であると言えるでしょう。



●pHの異常で生じる問題。

・食欲低下。
・粘液分泌過多。
・病気の多発。
・眼球の白濁。
・エラの機能障害。
・浸透圧の調整障害。
・遊泳困難。
・抱卵障害。



14.飼育水のpH・・・F

pHの急変でショック死する場合がある。

熱帯魚の場合、pHを急激に1以上変動させるとpHショックを
起こして遊泳死する場合があると報告されています。

ランチュウの場合、当然、pHの急変でショック死を起こす可能性はありますが、
私の経験上、熱帯魚ほどpHショックに神経質になる必要なないと考えます。






●pHショック。

・急激にpHを1以上変動させた場合に生じる。
・pHの急変に順応出来なかった事が原因。
・遊泳死を引き起こす。



15.硬度・・・@

一般的に言う硬度は総硬度の事である。

総硬度(GH)は、水中のカルシウムイオンとマグネシウムイオンの総量を表したもので、
この数値の違いによって、軟水や硬水に分類する事が出来ます。

硬水には利尿効果と腸運動を促進させる効果があり、新陳代謝が促進する事で
肥満魚の予防に役立つ事が期待出来ます。



●硬水の特徴。

・利尿作用がある。
・腸運動を促進させる作用がある。
・肥満魚の予防効果がある。






16.硬度・・・A

硬度に関する統一された基準はない。

硬水であるか軟水であるかを判断する場合、各国で統一された基準はありません。
したがって、以下にWHOの飲料水水質ガイドラインを示す事とします。

これによると、総硬度が120mg/リットル以上の場合を硬水と呼んでいます。



●WHOの飲料水水質ガイドライン。

軟水    :  0〜 60mg/L未満。
中程度の軟水: 60〜120mg/L未満。
硬水    :120〜180mg/L未満。
非常な硬水 :    180mg/L以上。



17.硬度・・・B

炭酸塩硬度はpHの変動を抑えるのに重要。

炭酸塩硬度(KH)は、総硬度の中でも炭酸水素イオンと結合する
カルシウムイオンとマグネシウムイオンの総量を表したものです。

この炭酸塩硬度は、水中の炭酸水素イオン濃度によって数値が変動し、
この数値が高いほどpHの変動を抑える事が出来ます。
つまり緩衝作用があると言う事です。



●炭酸塩硬度(KH)

・飼育水のpHの安定化に役立つ。



18.硬度・・・C

炭酸塩硬度の異常で様々な問題が生じる。

バクテリアの硝化作用によって酸が作られると、緩衝作用によって
炭酸水素イオンが消費され、炭酸塩硬度は徐々に低下します。

やがて炭酸水素イオンが不足してくると、十分な緩衝が難しくなる結果、
pHが大きく変動してしまう問題が生じます。

更に、炭酸塩硬度が高い場合も様々な問題が生じる為に、
炭酸塩硬度は適切な濃度を維持させる事が大切となります。



●炭酸塩硬度の異常で生じる問題。

@炭酸塩硬度が低い場合
・pHの変動が大きくなる。

A炭酸塩硬度が高い場合
・飼育水がアルカリに傾く。
・下痢。
・痩せ。
・食欲低下。
・粘液分泌過多。
・病気の多発。
・エラの機能障害。
・抱卵障害。
・バクテリア減少や死滅。



19.硬度・・・D

二酸化炭素の添加で炭酸塩硬度は上昇する。

炭酸塩硬度はpHと二酸化炭素と密接に関係しています。

例えばpHを一定にした場合、二酸化炭素を添加すると炭酸塩硬度は上昇しますが、
二酸化炭素を逃がすと炭酸塩硬度は低下します。

また、炭酸塩硬度を一定にした場合、二酸化炭素を添加するとpHは低下しますが、
二酸化炭素を逃がすとpHは上昇します。

さらに、二酸化炭素を一定にした場合、炭酸塩硬度を上げるとpHは上昇しますが、
炭酸塩硬度を下げるとpHは低下します。




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