水かえの方法


1, 水換えと水温との関係

水温が異なれば水換えの方法も異なる。

水換えの方法は、水温の違いによって必ず変える必要があります。

例えば高水温の場合、青水化が激しい為に、割水を行うと急激な青水化を起こしてしまいます。
結果、良い水の状態が3日と続かなくなってしまいます。

逆に低水温の場合、青水化があまりに遅い為に、100%の新水にすると保温を始めとした
青水の効果が長期間に渡って得られなくなってしまいます。

この様な事にならない為にも、水温と水換えの関係について、
最低限度の事を知っておく必要があるでしょう。
以下に水温と水換えの関係をまとめましたのでご参考下さい。



●水温と水換えの関係

 0〜 6℃  ……  冬眠期の為に水換えはしない。蒸発で減少した水量を補給する。
 7〜12℃  ……  基本的に水換えはしない。もし行う場合は古水を多く用いる。
13〜18℃  ……  水が汚れた場合は古水と新水を同程度用いて行う。
19〜24℃  ……  交配期である為に水が汚れた場合はやや古水を多く用いて行う。
25〜30℃  ……  水が汚れた場合は全て新水を用いて行う。
31〜36℃  ……  水が汚れる前に全て新水を用いて行う。
37〜38℃  ……  日除け等で水温の上昇を防ぐ事が必要となる。
38℃〜    ……  ほとんどの場合、魚は水温に対応出来ずに死んでしまう。

※水温と水換えの関係は、6℃間隔で考えるのが最適な目安と言えます。
※水温を無視した水換えを行うと魚は必ず病気になります。
※上記の目安は、私の養魚場で採用しているものです。






2, 水換えを行うかどうかの判断

水換えを行うかの判断は水の状態で決める。

基本的に水換えを行うかの判断は水の状態によって決めますが、
その判断となる基準は水温の違いによって変化します。

例えば、夏場に晴天で30℃を超える高水温となった場合、
朝の段階で「飲み頃の日本茶色よりもやや薄い水」であったとしても、
その日の夕方には非常に濃い青水となります。

さらに翌日にはドロドロとした青水になる場合があり、
これでは魚はたちまち体調を落とす結果となります。

しかし、もしこれが冬眠期である場合、常にやや濃い青水にしておかないと青水の維持が
出来なくなり、保温などの効果がなくなる事で魚の調子が悪くなる場合があります。

この様な事から、水温と水換えが必要になる水の状態との関係について、
大まかな目安を以下にまとめる事とします。



●水温と水換えが必要になる水の状態との関係

 0〜 6℃ …… どれだけ濃い青水であっても水換えは行わない。
 7〜12℃ …… ドロドロとした状態の場合は水を補充する事で青水を薄める。
13〜18℃ …… 朝の時点で日本茶色よりも濃い場合は2〜3日以内に水換えを行う。
19〜24℃ …… 朝の時点で日本茶色よりも濃い場合は1〜2日以内に水換えを行う。
25〜30℃ …… 朝の時点で日本茶色である場合は翌日までに水換えを行う。
31〜36℃ …… 朝の時点で日本茶色である場合はその日の内に水換えを行う。
37〜38℃ …… 日除け等で水温の上昇を防ぐ事が必要となる。
38℃〜   …… ほとんどの場合、魚は水温に対応出来ずに死んでしまう。

※上記の関係は、6℃間隔で考えるのが最適な目安と言えます。
※夏場は少しの油断で水換えのタイミングが遅れてしまうので注意が必要です。
※上記の目安は、私の養魚場で採用しているものです。






3, 水換えについての昔からの言葉

水換えは晴天の日の午前中に行う事が基本。

水換えについて昔から言われている事として、2〜3日汲み置きした水を使用して、
晴天の日の午前中に行う方法が良いとされています。

水を汲み置きする理由として、水温差が生じている事、水道水で塩素(カルキ)が残っている事、
井戸水で酸素が十分に溶け込んでいない事などがある為です。

雨天に水換えを行うと、雨水の流入によって水温が急変する事、太陽が照らない為に
1日中水温が上昇しない事などがある為に体調を崩す可能性が高くなります。

午後から水換えを行うと、池の立地条件の関係で水温差が生じている事や
水温が低下している最中に環境を急変させる事が問題となります。

したがって、水換えは晴天の日の午前中に行う方法が基本となります。






4, 水かえについての実際・・・@

新水の汲み置きは1日が多くなった。

新水と古水の水温差をなくす目的や、水道水に含まれる塩素を取り除く目的で、
今でも水換えの前に新水を汲み置きする事は大切です。

しかし今の時代、エアレーションやカルキ抜きの使用が容易である為に、以前は夏なら2〜3日・
冬なら3〜4日と言われていましたが、最近は水道水なら1日程度(夏場なら半日)、
井戸水なら最低1〜2日の汲み置きで十分となっています。

逆に汲み置きが長くなると、例えば夏場では、飼育水として使用する前に水質の悪化や
急激な青水化が生じ、飼育水として使えない状況となってしまいますので注意が必要です。



5, 水かえについての実際・・・A

1日汲み置きした水で午前中に行う。

昔からの言葉では、水換えは晴天の日の午前中に行う方法が基本でしたが、
そもそも水換えを行うかの判断は水の状態が最優先となるので、晴天を待つ様な方法を行うと、
逆に魚の体調を落とす事になります。

したがって、実際の水換えでは水の状態を第1とする為に、晴天はもちろん曇天や少々の雨でも、
水換えを行う場合があります。

ただ、天気が悪いときに水換えを行った場合、いつもより餌の量を減らす事、
雨よけを使用する事などを考慮する必要があります。

ただ、夕方からの水換えや大雨中の水換えは、魚に悪影響を与えてしまう可能性が高いので、
行わない方が無難であると私は考えます。



●水換えについての実際

・汲み置きは夏なら半日、冬なら1〜7日。
・水温が上昇している時間帯に行う。
・曇天や少しの雨天の場合でも水換えは可能。
・夕方や大雨では行わない方が無難。



6, 水換えの回数とランチュウへの影響

水換えの回数は姿に大きく影響する。

100%新水による水換えを行った場合、魚は刺激を受けて交感神経優位となり、
食欲や運動量が増加する事になります。

これを頻回に行った場合、ランチュウは縦方向への成長が加速しますが、
成長の速度に肉瘤や鱗の発達がついて行けず、肉瘤は乏しく鱗は荒く不揃いになってしまうなど、
様々な欠点が生じる可能性が高くなります。

逆に、100%新水を使った水換えの回数を減らした場合、受ける刺激が減弱する為に、
回数が多い時よりも、食欲や運動量が明らかに減少します。

この場合、ランチュウの縦方向への成長は抑制されますが、
横方向への成長や肉瘤の発達が促進され、鱗も細かく揃います。

この様な事から、水換えの回数は魚の姿に影響を与える要素の1つとなりますので、
しっかりと水の状態をコントロールしながら、計画的に行う事が大切です。



●水換えの回数と姿への影響。

水かえが多い場合
・食欲や運動量が増す。
・縦方向への成長が促進される。
・スマートな体型に仕上り易い。
・太みが出難い。
・肉瘤が乏しくなり易い。
・鱗は荒く不揃いになり易い。
・強運動の為に尾をたたみ易い。
・水質の保持が簡単で体調維持が可能。
・病原菌の繁殖が抑制されて病気になり難い。

水かえが少ない場合
・食欲や運動量が減少する。
・縦方向への成長が抑制される。
・スマートな体型に仕上がり難い。
・魚に太みが出易い。
・肉瘤の発達が促進され易い。
・鱗は細かく揃い易い。
・運動が少ない為に尾をたたみ難い。
・水質の保持が難しく体調を落とし易い。
・病原菌の繁殖が促進されて病気になり易い。



7, 各月毎の水換えの目安・・・基本

成長させるなら水換えの回数を増やす。

水換えの回数や割水の程度は人それぞれに方法がありますが、自分の飼育方針や飼育環境、
飼育技術を考えた上で、自分なりの方法を見つけ出す事が非常に大切です。

ただ、初心者は最初に目安があった方が良いと思いますので、
右にその目安の1つを紹介する事と致します。
なお、初心者向けの目安には水換えの回数に幅を持たせています。

自然への順応を意識しながら10cm程度の成長を目指す場合は「少ない回数」を、
品評会を目指して魚を12cm以上に成長させたい場合は「多い回数」を採用すると良いでしょう。
どうぞ、ご参考下さい。



●水かえの目安・・・初心者向け

・ヒーターを使用しない場合の目安を記載。
・冬季は水換えを施行しない方が無難。
・この目安では4月下旬〜5月上旬が交配時期。

弐歳・親  水かえの回数 古水:新水
 1月 = 0〜1回  → 5:1
 2月 = 0〜1回  → 5:1
 3月 = 1〜3回  → 1:1
 4月 = 3〜6回  → 1:5
 5月 = 5〜9回  → 0:1
 6月 = 4〜9回  → 0:1
 7月 = 6〜9回  → 0:1
 8月 = 6〜9回  → 0:1
 9月 = 5〜9回  → 0:1
10月 = 3〜5回  → 1:5
11月 = 2〜4回  → 1:1
12月 = 1〜2回  → 4:1

当歳魚   水かえの回数 古水:新水
 4月 = 6〜9回  → 0:1
 5月 = 5〜9回  → 0:1
 6月 = 4〜9回  → 0:1
 7月 = 6〜9回  → 0:1
 8月 = 6〜9回  → 0:1
 9月 = 5〜9回  → 0:1
10月 = 3〜5回  → 1:5
11月 = 2〜4回  → 1:1
12月 = 1〜2回  → 4:1






8, 池の掃除の仕方・・・@

青苔は擦り取らない事が基本。

池の掃除の仕方の基本として、昔から、「池に生えた青苔は擦り取らない様に注意が必要。」と
言われています。

実際、魚に対する青苔の役割は微々たるものとは言えないので、
1年を通して全ての青苔を擦り取るのは問題です。

ただ、あまりに青苔を保護してしまうと青苔がどんどんと分厚くなって行き、
すき間に汚れた水を貯め込んでしまうので、せっかく水換えを行ったとしても十分に水の交換が行えず、
最初からやや汚れた状態の水になってしまいます。

この様にならない為にも、十分な水洗いを少なくとも2回は行うか、
もしくは池底の青苔のみを擦り取ってしまう等の対処を考える必要が生じます。



●池の掃除の仕方・・・基本

@水を抜きながらブラシで底や壁を擦る。
A池底の青苔を金属ブラシで除去する。
B水が抜けたら水道水で水洗いを行う。
C残った汚れはブラシで擦り取る。
D再び水道水で水洗いを行う。
E水の汚れが少なくなったら池に水を入れる。



9, 池の掃除の仕方・・・A

私は簡単な掃除で最大限の効果を目指す。

基本通りの掃除は時間が掛かる為に、池の数が多い場合は非常に大きな負担となります。

したがって、私は池の水を抜く際に簡単にブラシで掃除する程度に留め、
一度綺麗な水で水洗いを行って終了とします。当然、汚れが残ったまま新しく水を張る事になりますが、
私はこの汚れを割水と考えます。

割水を行った分、水質の悪化は早まりますが、その分、水換えのペースを早める事で対処します。
早ければ、2日に1度の水換えを行う場合があると言う事です。
これによって魚は刺激を受け、成長の促進を行いながら色揚げも可能となる訳です。






10, 池の掃除の仕方・・・B

青苔取りに塩素系漂白剤を使用する事もある。

塩素系漂白剤そのものは人体にも害を与える程の強い毒性がありますが、その成分が水道水に
含まれるカルキと同じ塩素である為に、カルキ抜き(ハイポ)の使用で、この毒性を中和させる事が出来ます。

したがって、なかなか取り除けない青苔の掃除に使用する場合があります。

しかし、換気が悪い所での使用は絶対に行ってはならないなどの注意事項があるので、
しっかりと説明書を読む事が大切です。

また、誤って魚のいる池に投与してしまった場合、
魚が全滅してしまう可能性もあるので十分な注意が必要です。

万が一、魚のいる池に混ざり込んだ場合、ハイポを投与する方法もありますが、
早急な水換えを行った方が良いでしょう。



●塩素を使った池の掃除の仕方

@青苔を取り除きたい部位に投与する。
Aブラシで引き伸ばして5〜10分程度待つ。
Bブラシで青苔をこすり取る。
C十分な水洗いを少なくとも2回は行う。
D池に1割程度の水を張る。
E普段の5〜10倍量のハイポを投入する。
Fハイポを溶かしてブラシで底や壁を磨く。
G水を抜いて通常量のハイポを加えて終了。

注)換気に注意。(説明書を読む。)
注)塩素系漂白剤のみを使用出来る。



11, 金属タワシの害。

金属の破片が口に刺さる事がある。

青苔取りに金属タワシを使用する事は珍しい事ではありませんが、
あまり古い金属タワシを使用していると金属の破片が池に残ってしまう場合があります。

この破片を魚が口に含んだ場合、上手に吐き出す場合が殆どですが、
中には口に突き刺さる場合がある事を忘れてはいけません。

破片が口の中に突き刺さった場合は除去する事が難しく、餌を食べる事が出来なくなる事から衰弱死する
可能性があります。また、運よく除去出来たとしても傷が完治するまで数ヶ月は必要となります。

この事から、金属タワシを使用する場合は劣化に注意し、
早めに新しいものに変えた方が無難であると言えるでしょう。







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