ランチュウの交配法


1.交配は前年の秋の飼育から

交配を成功させるには前年の秋からが大切。

ランチュウは秋頃から越冬と交配に向けての体づくりを始める為に、
もし、秋〜春までの時期に病気にさせてしてしまうと、痩せ細った状態で春を迎える事になります。

逆に、餌の与え過ぎや過保護な飼育で肥満魚にしてしまうと、交配期であるにも関わらず、
オス魚は精力減退で追いが弱く、メス魚は難産で腹だけが膨れ上がる事となります。
最悪の場合、メス魚は卵を詰まらせて死んでしまう事がありますので注意が必要です。

このような事にならない為にも、前年の秋からの飼育は、普段以上に順育を意識する必要があります。

●秋からの飼育における注意。

1.病気にならないよう心掛ける。
2.しっかりと運動させる。
3.肥満魚にしない。
4.順育を心掛ける。






2.魚を起こす時期について・・・基本

目安は第1回目の交配予定日の約1ヶ月前。

魚を自然に順応させて飼育をしている場合、3月下旬の池の大掃除で冬眠から起こし、
その約1ヶ月後の、4月20日頃に交配をさせる方法が良いとされています。

また、ビニールハウスやヒーターで水温を変化させて魚を起こす場合でも、
魚を起こした1ヶ月後が交配予定日の目安となります。

魚を早く起こし、早い時期に交配をさせる目的の多くは、他の人よりも当歳魚を大きく仕上げ、
迫力を出させる事にあると思いますが、初心者は、起こす時期を早める様な事はしない方が良いでしょう。

たいていの場合、魚の調子を崩してしまう事、水換えで温度調節に失敗する事、
成長期を逃して大きさが確保出来ない事、労力の割には成果が上がらない事などの結果になります。

逆に、5月上旬の交配であっても、秋の段階で品評会レベルにまできっちりと仕上げる事が可能ですので、
初心者は、まずこちらの飼育技術を獲得した方が、今後の飼育技術の向上の為には良いかと考えます。

●魚を起こす時期について・・・基本

1.1回目の交配予定日の1ヶ月前が基本。
2.昔からの基本では4月20日が交配日。
3.早く起こすにはヒーターの使用が必要。
4.早採りは労力の割には成果が上がらない。
5.5月交配でも品評会を目指せる。
6.着実な上達が最も近道。



3.魚を交配させる時期について・・・基本

順育の場合は桜前線に合わせて行うと良い。

自然に順応させた場合は、気候の変動による水温の上昇や冬眠から起きてからの生殖腺の成熟、
ミジンコ採取などを考慮した上で、4月20日位に第1回目の交配を行う方法が良いとされています。

ただ、これでは地域差やその年々の気候の違いが全く考慮されていないという問題がありますので、
これらの問題を解決する為にも、その年の桜前線に合わせると良いでしょう。



4.交配させる魚の年齢について・・・基本

生殖腺の成熟を考えると参〜伍歳魚が最適。

昔からの基本では、弐歳魚の使用は「試し引き」とされ、どの様な姿(当たり腹)が出るかの
確認を行うだけを目的としていました。
この場合、飼い込みは行わずに、早い段階で全ての仔を川に流していたとされています。

逆に、しっかりと飼い込みを行うのは、生殖腺が成熟し、当たり腹を出した経験のある
参〜伍歳魚の仔が中心となっていました。
仔の特徴が分かっている事、卵が大きい事、素早い成長が期待出来る事などが理由です。

確かに、10cm程度の弐歳魚を種に使用した場合、卵の大きさは親魚よりも小さい印象がありますし、
当たり腹を出すかの判断は全く出来ないと言えるでしょう。






5.オス魚とメス魚の対比数・・・基本

オス魚:メス魚は2:1もしくは3:2。

魚を交配させる場合、オス魚の数を多くしないと未受精卵が多くなってしまいます。

さらに悪い事に、未受精卵には水カビが生え、受精卵にも悪影響を与えてしまう事から、
孵化にたどり着く割合は更に減少します。

この悪循環を防ぐ為には、交配でオス魚の割合を増やす事で受精率を上げる必要があり、
一般的に、オス魚:メス魚は2:1もしくは3:2が良いとされています。

ただ、自分が理想とする魚を自分の手で創りたい場合や優れた種魚を探し出したい場合、
どの魚を何代前に使ったかを判断したい場合は、やはり1:1で交配させる事が基本となります。






6.交配の回数について

1シーズンに交配させる回数は2回まで。

自然交配の場合、魚に対する負担が非常に大きい為に、1シーズンに繰り返し行うと
体調不良や成長不良の原因となる上に、交配年数や寿命にも悪影響を与える結果となります。

この事から、1シーズンに自然交配させる回数は2回までとした方が良いでしょう。

人工受精の場合は魚に対する負担が少ない為に、1シーズンに4回程度の
交配回数を行う事が出来ますが、それでも回数が多くなると、成長不良などの原因になります。

人工授精であっても、1シーズンの交配回数は2回までに留めた方が良いでしょう。



7.交配前の魚の飼育について

オス魚とメス魚は別々の池で飼育する。

オス魚とメス魚の別飼いは、オス魚の前ヒレに追星が現れる時期までに行う必要があります。
つまり、水温が12℃を超えた頃から別飼いが必要となる訳です。

途中、水換えをする際は割水を行う事で、青水を維持させる事が大切となります。
生殖腺を徐々に成熟させる目的と、環境の変化による産卵刺激を弱める事で自然流産を防ぐ目的です。

しかし、あまり濃い青水にすると、逆にエラ病の原因となりますので注意が必要です。
飲み頃の日本茶色が維持出来れば十分です。

餌の与え過ぎは、急激な生殖腺の成熟を来たし、自然流産の危険性が上昇する為に良くありません。
過度に餌を与える事無く、魚をしっかりと泳がせる事が交配を成功させる1つのポイントと言えるでしょう。

●交配前の親魚の飼育

1.オス魚とメス魚を別々の池で飼育する。
2.餌を過度に与え過ぎずに泳がせる。
3.日本茶色の青水で飼育を続ける。
4.環境を急変させない。
5.手網で魚をすくわない。



8.交配予定日の前日について

午前中にオス魚とメス魚を産卵池に放流する。

オス魚とメス魚を産卵池に放流する際、交配予定日前日の午前中に行う事が一般的です。
当然、オス魚とメス魚を産卵池に放流する際は魚の扱いに細心の注意が必要です。

人によっては、オス魚だけを交配予定日の2日前から産卵池に入れる事で環境に慣らし、
メス魚はその翌日に入れると交配が上手くいくと言う愛好家もいます。

確かに、オス魚を産卵池の環境に慣らす事で、より一層交配に集中させる事が期待出来ますので、
交配が上手く行かなかった場合は、試してみるのも良いでしょう。









9.交配予定日について

交配は日の出頃から正午頃までに行われる。

交配予定日当日は朝5時に起き、セッティングをした池を見て回ります。

早い場合は既に交配が始まっていますので、人工授精を行う場合は直ぐに魚を両手に取り、
予定通りの掛け合わせを行う必要があります。
池によっては、朝9時頃から始まる場合もありますので、十分に観察を続ける事が大切です。

自然交配の場合は、交配が正午に及ぶ場合がありますが、長い交配時間を確保すると
せっかく生んだ卵を親が食べてしまいます。

更に悪い事に、卵を食べた親は非常に高い確率で消化不良を来たす結果となりますので、
ある程度の卵が確保出来た場合、交配を途中で中止させる事も大切です。






10.種魚の重要性

交配後の種魚は稚魚と同等以上に注意を払う。

交配後、ブリーダーの注意は新しく誕生した稚魚に向き、
種魚にはあまり注がれなくなる傾向があります。

しかし、交配を終えた種魚は体力の低下によって病気にかかり易い状態になっています。
さらに優れた種魚を見つけ出す事の重要性を考えた場合は、何としても種魚を守らなければいけません。

ブリーダーにとって種魚は会魚よりも重要であり、優れた種魚のペアーを見つけ出した場合、
数年間は安定した高いレベルを維持出来る為です。

交配後の種魚の管理は、稚魚と同等以上に細心の注意を払う必要があります。







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