太い魚と肥満魚


1.肥満魚について・・・@

肥満魚とは脂肪によって太く見せている魚。

肥満魚とは未熟な骨格の上に脂肪が付いている魚の事を言い、
青仔の時期までに骨格の基礎を完成させなかった事が1つの原因となります。

つまり、未熟な骨格の魚は褪色時のヤツレも大きく、それを取り戻す為に餌を過剰に与え続け、
結果として、未熟な骨格の上に脂肪が付いた肥満魚になる場合が多いと言う事です。

この様な魚は、骨格の未熟性が根底にある為、将来性は乏しいと言う事が出来るでしょう。

肥満魚を予防する上でも、孵化後1ヶ月間はしっかりと飼い込む必要があり、
例えば、池が赤くなるまでミジンコを投与する方法や24時間シュリンプ法があります。
ただ、この方法は賛否両論である事も事実です。






2.肥満魚について・・・A

餌をやり過ぎた場合でも肥満魚となる。

孵化後1ヶ月間をしっかりと飼い込む事で骨格を完成させたとしても、
餌を大量に与え続ける事や高脂肪餌を与え続ける事を行うと、
産卵直前のメス魚の様に胴幅だけが異様に目立って増加してしまう事になります。

これは内臓に脂肪が沈着している事を示し、この様な魚も肥満魚と呼びます。
ただ、上記で述べた肥満魚とは異なり、餌やりを改める事で肥満の改善が期待出来ます。

しかし餌やりの方法を改める事なく、長期間に渡って肥満の状態を続かせると、
肥満魚特有の症状を来たす事となりますので注意が必要です。

肥満魚はどれだけ尾形が綺麗でも、品評会で上位入賞する事はありませんので、
餌の与え方には十分な考慮と注意が必要となります。






3.肥満魚について・・・B

肥満魚の壁を越えるのに最低10年は必要。

ある程度の経験を積み、魚を死なせる事が無くなって来ると、
今度は魚を大きく育て上げたいと考えるのが普通です。

魚を大きく成長させるには、餌の回数と水変えの回数を増し、飼育密度を緩める事が基本となり、
飼育歴が10年にもなると簡単にサイズアップを行う事が出来る様になります。

しかし、ランチュウの育成における本当の難しさはここから始まります。
サイズアップと共に肥満魚の問題が生じる為です。

実はランチュウの育成において、肥満魚を予防しながら大きく育て上げる事は非常に難しく、
この壁を越えるには壁にぶち当たってから最低10年は必要であると言われています。

尾形の鑑識に必要な年数は最低10年ですから、多くのベテラン愛好家は
「魚を見る事(尾形を鑑識する事)が出来ても創る事が出来ない。」という状況を経験する訳です。

なお、ここで述べている肥満魚とは、非常に鑑識が難しくてレベルも高いものです。



4.太い魚と肥満魚の違い

太い魚とは筋肉によって太くなった魚。

ランチュウは横幅のある体型をしている為に、全て肥満体である印象を受けますが、
実際は、肥満魚と太い魚の2つのグループに分ける事が出来ます。

この2つのグループ間での違いは、肥満魚が単に脂肪が乗った為に太く見せているのに対し、
太い魚は完成した骨格の上に十分な運動で筋肉が発達している所にあります。

飼育上、太い魚と肥満魚との間で大きな差が生じるのは体質の違いであり、
さらにカシラや総体の印象、泳ぎや鱗の状態にも経験者が見れば一目瞭然の違いが生じます。

●太い魚と肥満魚の違い

太い魚
 体質
 総体
 カシラ
 鱗
 泳ぎ
: 十分な運動の為に体力と環境への適応力が付いており、非常に強い体質を持つ。
: 骨格の発達と運動による筋肉の発達によって、太い中にも引き締まりを感じさせる。
: 頭骨の土台が完成しており、系統通りのカシラに仕上がる事が期待出来る。
: 体質が強く健康が増進している為に、年を重ねても美しい光沢のある鱗を維持する。
: 筋肉が発達で引き締まった姿をしている為に、軽やかでスピード感のある泳ぎをする。

肥満魚
 体質
 総体
 カシラ
 鱗
 泳ぎ
: 体力や環境への適応力に乏しい為に体質が弱く、直ぐに体調を落としてしまう。
: 骨格の不十分さを単に脂肪で補っている為に、姿に引き締まり感が無い。
: 頭骨の土台が出来ておらず、系統通りのカシラに仕上がる事が期待出来ない。
: 体質が弱い事から早期に老化現象が現れ、早い段階で鱗の光沢が失われる。
: 骨格の不十分さと脂肪の為に、体を大きく左右に振りながら重い泳ぎをする。



5, 肥満魚にしない為に

過保護な飼育は肥満魚の原因となる。

肥満魚にしない為には、餌を与え過ぎずに順育を心掛ける事が基本となります。

餌の量は常に腹八分目を意識して、魚が満腹で泳がなくなる状態を無くし、
その上で良質の青水と青苔を使いながら出来る限り水換えの間隔を延ばす事が大切となる訳です。

時には魚を自然に帰すつもりで、しっかりと季節や天候を感じさせ、
より強い体質に育て上げる飼育を行う事が肥満魚を予防する上での基本と言えるでしょう。

飼育者は時に厳しく、時に優しく魚に接する必要があるでしょう。

●肥満魚の予防の基本

@餌を与え過ぎない。(腹八分目まで)
A青水と青苔をしっかりと食べさせる。
B水換えの間隔を延ばす。
C尾張りを失わない程度に運動させる。
D日覆いや雨覆いを過度に使用しない。
E季節感やその日の天候を感じさせる。
F競争心の出る飼育密度を維持させる。







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