餌やりの方法


1.餌やりの方法ついて

自分なりの研究や経験が大切。

餌やりの方法は、魚の育成において最も奥深い要素であると言えるでしょう。

餌には様々な種類がありますし、魚には成長期を含めた飼い込みの時期や
カロリー制限の時期があります。

さらに、水の状態や飼育環境、天候や気候、系統や飼育方針も餌の与え方に関わって来る訳です。
餌を与えるに当たっては、魚を大きく成長させる事と肥満魚に仕上げない事が求められます。

したがって、基本的な知識を踏まえた上で研究や経験を重ね、
自分なりの答えを見つけ出す事が大切となる訳です。



2.餌と水温の関係について

水温の違いで餌の量は変化する。

ランチュウは水温によって自身の体温が変化する変温動物である為に、
生体機能は水温の影響を大きく受けてしまいます。

すなわち、水温の上昇と共に生体機能は活動性を増し、
逆に水温の低下と共に生体機能は抑制される訳です。

この為、魚への餌の量や与え方は水温の違いによって変化させる必要があり、
間違った餌やりを行うと、必ず魚を消化不良などの病気にさせてしまいます。

水温には十分な注意を払い、水温に応じた餌の量や与え方を、しっかりと学んでおく事が大切です。






●水温と餌の関係。 (※6℃間隔で考えるのが最適な目安となります。)

 0〜 6℃ … 冬眠状態の為、晴天時以外は基本的に餌を与えない。
 7〜12℃ … 生理機能が低下している為、消化の良い餌を最小限度与える。
13〜18℃ … 生理機能が完全でない為、消化の良い餌を注意して与える。
19〜24℃ … 生殖腺の急激な発達を抑制する為、餌の量をやや控える。
25〜30℃ … 成長を促進させる為に、十分な餌を与えるが肥満魚には注意。
31〜36℃ … 暑さで食欲が落ちる為に、様子を伺いながら十分な量を与える。
37〜38℃ … 魚が対応できる限界の水温で、餌を与えてもあまり食べない。
38℃〜   … ほとんどの場合、魚が対応出来なくなる水温。



3.餌と季節と天候の関係

季節や天候の違いで餌の量は変化する。

季節や天候の違いは水温にも大きく影響を与えるので、季節やその日の天候に応じて
餌の基本量を調整する事が大切です。

例えば、今日は普段よりも寒いと感じた場合や雨天時では、
普段通りに水温が上昇しない為に、餌の量を控える必要があります。

また、急激な天候の変化は急激な水温の変化をもたらす為に、
天候の急変を予想しながら餌の量を調整する事も大切となります。

例えば、朝は晴天であっても夕方から大雨になる場合、午前は餌を十分に与えますが、
昼からは徐々に餌の量を控えて行き、大雨になる約2時間前からは、
餌を与えない様にする必要がある訳です。



4.餌を与える時間帯・・・基本

間違った時間帯に与えると病気を招く。

午前中は気温の上昇と共に、池の水温も上昇する時間帯です。

したがって、天気が良くて池に日光が当たっている様であれば、例え水温がやや低い早朝に
餌を与えても、消化不良などの病気を引き起こす可能性は低いと言えます。

しかし、午後2時を過ぎると水温が低下し始める時間帯となります。
この場合、遅い時間帯に餌を与えると、消化不良などの病気を引き起こす可能性が高くなります。



●餌を与える時間帯・・・基本。

晴天の場合
春 … 午前7時半〜午後3時まで。
夏 … 午前6時〜午後4時まで。夕立に注意。
秋 … 午前7時半〜午後3時まで。
冬 … 餌を与えないか、与えても正午頃だけ。

※時間帯は天候や水温によって変化する。
※飼い込みの際は基本よりも遅くまで与える。






5.餌の1回量・・・基本

5分以内に食べ尽くす量。

ランチュウには胃がない為に、1度に多くの餌を腹に入れる事が出来ません。
したがって、過量を与えた場合は十分な消化が出来ず、吸収率が低下する結果となります。

また、なかなか空腹にならない為に、結果的に1日の合計量が低下する事にもなるでしょう。
この様にならない為にも、餌の1回量は5分で食べ尽くす量にする事が大切です。



6.餌の1日の回数・・・基本

消化時間を考慮して可能な限り頻繁に与える。

餌やりの回数を増やす場合、餌の消化時間を考慮する事が重要であると言えるでしょう。
つまり、与えた餌が消化される頃に次の餌を与えると言う事です。

この方法を可能な限り繰り返す事で、消化率の改善や1日量の増加が可能となり、
魚の成長促進が期待出来る訳です。

しかし、餌やりの回数を増加させるほど、消化不良を含めた病気の発生頻度が
上昇する事にもなります。

したがって、初心者は5分以内に食べ尽くす量を1日に5回程度与える事から
始めた方が良いでしょう。



7.昔からの言葉・・・@

餌は魚ではなく池に与える。

昔から「餌は魚ではなく池に与える。」と言われています。

つまり、魚に与える餌の量を決める場合、池にいる魚の数に加え、
水の状態や池の広さを考慮する必要がある事を意味します。

具体的には、青水では食欲の抑制が生じる為に、新水の時と同程度の量を
与えてしまうと食べ残しが発生します。

したがって、青水が濃くなるにつれて徐々に餌の量を減らして行く必要がある訳です。

また、高密度では食欲が抑制されますが、密度を適正化する事で食欲の亢進が期待出来ます。
餌の1回量は魚の数に加えて、池の広さも考慮する必要がある訳です



●魚への餌やりについての言葉。

・青水が濃くなるほど餌の量を減らす。
・放尾数と池の広さで1回量を決める。



8.昔からの言葉・・・A

水換えを行った日は餌を控える。

昔から「水換えを行った日は餌を控える。」と言われています。

水換えは魚にとって大きな環境の急変である為に、餌を通常通りに与えてしまうと、
体調を落として病気を招く恐れがある為です。

したがって、水換えを行った日は餌を控える必要があり、
特に初心者の場合は注意が必要です。

なお、「餌を控える。」とは餌の量を減らすという意味であり、
餌を与えないと言う意味ではありません。



9.餌と水換え・・・実際@

餌を与える前に水換えを施行。

餌を食べた後は消化時間が必要となりますが、餌を食べた直後に水換えを施行すると、
交感神経の優位性の為に消化不良を引き起こす可能性が高くなると言えるでしょう。

これを防ぐ為には、空腹時に水換えを施行する事が大切であり、
早朝の水換えが基本となる訳です。



10.餌と水換え・・・実際A

水換えを施行して30分は禁食。

水換えを施行した場合、魚は新水による刺激を受けて交感神経が極端に優位となり、
魚の活動性は亢進されますが消化管の運動は抑制される結果となります。

この状態は30分程度続く為に、この間に餌を与える行為は好ましいとは言えません。

この事から、水換え後の餌やりは水換えを行って30分程度してから
開始する事が大切です。1回量は通常通りで良いでしょう。



●餌と水換え・・・実際

水換えの直後
・交感神経が優位となる。
・魚の活動性は亢進する。
・消化管の運動は低下する。
・ストレスがかかっている。

水換えをして30分以降
・交感神経優位の解除。
・魚の運動性の正常化。
・消化管の運動の正常化。
・ストレスの解除。






11.餌を食べないとき

病気を含めた原因の鑑別が必要となる。

魚が餌を食べなくなる原因として、魚の状態・餌の状態・水の状態・
飼育環境の状態の4つが考えられます。

したがって、餌を食べない場合は原因を正確に突き止めて、
素早く適切に対応する事が大切です。



●魚が餌を食べない原因

魚の状態
・満腹  ⇒ 餌やりの方法を改善。
・病気  ⇒ 病気の鑑別と治療を施行。

餌の状態
・嗜好性 ⇒ 与える餌を変更。
・品質  ⇒ 保存方法を変更。

水の状態
・青水  ⇒ 必要に応じて水換えを施行。
・水質悪化⇒ 早急に水換えを施行。

飼育環境
・水温  ⇒ 18〜30℃の水温を心掛ける。
・酸欠  ⇒ エアレーションと密度の改善。



12.最後に

上級者を真似るのは好ましくない。

初心者は、「上級者と同様の飼育方法を行うと同様の魚に仕上がる。」と考える傾向にありますが、
実際は同様の魚に仕上がる事はありません。

上級者は自身の飼育方針や飼育環境、系統の特徴や飼育技術を踏まえた上で、
餌やりや水換えの方法を決定しています。

したがって、初心者が上級者の真似をすると、飼育方針や系統の特徴が分からないまま、
異なる飼育環境で自身が持つ飼育技術以上の飼育をしてしまい、
魚を病気にさせる結果となってしまいます。

初心者は、絶対に魚を死なせない飼育技術の獲得を第1の目標とし、
そこから様々な技術を磨いて行く事が大切となります。







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