穴あき病  (別名 : 非運動性エロモナス病)

 概要

非運動性エロモナスが傷口から侵入し、周辺組織を酵素で溶かし、
破壊する事で鱗が剥がれ、皮下組織が露出してしまう病気です。

見た目の割には、食欲や活動性は落ちない事が多いと言えるでしょう。

エロモナス菌は淡水中の常在菌で、鞭毛を持たずに運動しないsalmonicida(穴あき病の原因菌)と、
鞭毛で運動するhydrophila(赤斑病・松かさ病の原因菌)が知られています。

salmonicida(穴あき病の原因菌)は20℃程度の低水温を好み、
hydrophila(赤斑病・松かさ病の原因菌)は25〜30℃程度を好むと言う違いがあります。

Salmonicidaとhydrophilaに共通する事として、健康な魚が感染して発症する事は少なく、
外傷や体調の低下などが生じた場合に感染して発病する事が多いと言う事です。


 原因生物

グラム陰性菌の非運動性エロモナス・サルモニシダ
(Aeromonas salmonicida)


 好発時期

春や秋など、水温が20℃前後の時期。


 症状

初期

エロモナス菌が傷口から魚体内に侵入する事で感染を受けた部位は充血し、
1〜2枚の鱗の発赤や脱落として見られます。






重症

発赤が徐々に拡大し、鱗が透明化して剥がれ始めます。
鱗の剥がれた部位は次第にえぐれ、皮下組織や筋の露出が見られる潰瘍の状態になります。


末期
やがて、カラムナリスなどの二次感染などが加わり、無残な姿で衰弱死する結果となります。
なお、開いた穴が腹腔にまで達する事は少ないとされています。






 有効と考えられる薬剤
 
 液体  グリーンFゴールドリキッド
 パラザンD
 サンエース
 
 粉末  グリーンFゴールド顆粒
 エルバージュエース
 ハイートロピカル
 フレッシュリーフ


 当養魚場での治療方針

 @〜Eを同時に開始して、3〜5日間の薬浴を繰り返す。

 @ 魚の活動性が悪い場合のみ絶食。
 A 水換え。(舟に移して100%新水を使用。たたき池は不可。)
 B 十分なエアレーション。(少なくとも池の2隅に設置)
 C 0.5%塩浴。(1日目から0.5%塩浴。)
 D エルバージュ4g/100Lを投与。(3〜5日間の永久浴を繰り返す。)
 E パラザンD(観パラD)(餌に染み込ませて1日10粒投与)又はパラザン粉末の経口投与。

 ※治療池の水が腐った様な臭いがする場合は直ぐに水換えを施行する。


 説明書にあるグリーンFゴールド顆粒の使い方

 薬品名  グリーンFゴールド顆粒
 成分  本剤10g中に、ニトロフラゾン 5g/スルファメラジンNa 5gを含有
 使用目的  エロモナス感染症、カラムナリス感染症の治療
 使用方法  本剤1gを水32〜40L中に徐々に加えた後よく混和
 副作用  効果が強い為、規定量を超えてを投与すると魚を死なせる事になる
 注意事項  フラン剤は、日光によって分解してしまい効力を失う


 病気が発生した池や使用した飼育器具

池の水を抜いて晴天下で乾燥させる方法が基本となります。

しかし、天日干しが不可能の場合は、イソジン2倍希釈液を散布して
乾燥させる方法が良いでしょう。

この場合、容器にイソジンの色が付きますが、2日程度で消えます。
もし気になる場合はハイポで中和させる事も出来ます。


 予防法

エロモナス菌は常在菌であり、傷口からの感染や弱った魚への感染が多い為に注意が必要です。

また、水質の悪化はエロモナス菌が増殖しやすい環境となる為に、
発病する可能性が高くなると言えるでしょう。


 補足

最近、エルバージュやパラザンDでは治らない「新穴あき病」が鯉で出現しています。
非運動性のエロモナスがエルバージュやパラザンDに耐性を持った事が理由として考えられます。

現在の所、新穴あき病が金魚で確認されたと言う報告はありませんが、
耐性菌を防ぐ為にも抗生剤の乱用は避ける必要があるでしょう。




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